Episode さんびゃくよんじぅにぃ 『両国国技館 その壱』 (2011・2・20)昨年末、両国国技館で行われたアウディA8の新車発表会のプレイベントで、オーケストラと共演した時の話。 両国には普段でも浴衣姿のお相撲さんが歩き、江戸の古い町並みもあるのかなと思っていたが、思っていたよりも都会的だった。 国技館の裏口から入り太鼓を搬入すると、発表前のアウディの新車が土俵上に組まれた特設ステージ上にすでに展示してあった。 スポーツタイプではなく重量感のあるセダン型で、独特なフロントライトがおしゃれだ。 場内は鬢付け(びんつけ)油の香りがうっすらとし、見上げれば歴代横綱の大きな写真がズラリ。 楽屋には紫色の座布団があったが、その大きさは2枚並べると十分寝ることが出来るほどのもの、力士が座るのにちょうどよい大きさだ。 コの字型の座敷がある大部屋も近くにあり、通路の壁には力士たちがテッポウをした手あかがついていた。 外に出ると、先ほどまで降っていた雨も上がり、少しだけ晴れ間が見えた。 今回共演するオーケストラは、「東京ニューフィルハーモニック管弦楽団」、指揮は曽我大介氏、曲は『太鼓協奏曲〈太鼓について〉』だ。 曽我氏とは初対面だったが、そのソフトな雰囲気はオーケストラとの練習が始まると一変し、激しく振る下ろすタクトは野性的で、 私はこれまで共演してきた指揮者との曲の解釈の違いに戸惑った。 戸惑う私に、オーケストラ団員の心の目が突き刺さってくるように感じて少し怖くなった。 あせる気持ちばかりが先に立ったまま、その日の練習は終わった。 このような状況にもかかわらず、練習後も曽我さんは私には何も指示されなかった。 「太鼓を生業としているのであれば、自分で解決しなさい。」ということか・・・いずれにしてもプレッシャー。 その夜ホテルに戻り、よくよくその日の練習を思い返してみると、すでに持っていた勝手な曲のイメージにより、 タクトに合わそうとしなかった自分の頑固さに気付いた。 「明日は曽我さんの棒に、素直にねっとりついて行こう。」、そんなことを考えているとなかなか寝付けなかった…、 と書きたいところだが、すぐに寝てしまった。 翌日の本番前のリハーサルは、三枝成彰氏も立ち会う中で行われ、アウディの関係者らしき人の姿も多数あった。 国技館では大太鼓がよく響く。 その日は昨日とは違い指揮棒がよく見え、開き直って臨んだのがよかったのか、オーケストラと楽しく合わせることが出来た。 リハーサル後にオーケストラの団員の方たちが、大太鼓の重さや何の皮が張ってあるのかなど笑顔で質問してきた。 演奏に関しての話はなかったが、前日よりも団員との距離が近くなったことを感じた・・・。 つづく |
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